体外受精に鍼灸を併用して妊娠に至る3ヶ月の記録2-体外受精の経過
たまきさん(仮名)ご本人による体験レポートの第2回目です。前回の初期検査に引き続いて、今回は体外受精前から妊娠判定までになります。
院長 宮下陽子
体外受精 1回目
Day4:採卵期のホルモン検査(採血)および診察
ホルモン値が高く、片方の卵胞に卵3つ、他方は小さい。排卵誘発剤として内服薬4日分(セロフェン)と自己注射2回分(ゴナールエフ)を処方される。自己注射については病院で指導を受け、当日夜に1回目を行った。
Day6
自宅にて2回目の自己注射。
Day8:採血後診察をして採卵日の決定
排卵誘発剤の効果は見られず卵胞は変わらず3つ、卵子は取れて1〜3個。初期検査の結果からするともっと効果が出て卵胞が増えることを期待していただけに先生も首を傾げる。ホルモンの数値がよくないため、その影響か?今回は採卵を見合わせるという提案も先生からあったが、まずは一度一通り経験しておきたいとの希望から決行してもらうことにした。
採卵は2日後、移植はその2日後に決定。精液採取のため最低3日禁欲。点鼻薬(ブセレキュア)と錠剤(セロフェン)の処方。
採卵当日
精子を採取し2時間以内に来院。まだ排卵していないかを内診にて確認後、採卵控え室(手術エリア)へ。
先生が慣れた手つきで素早く採卵。育っている卵胞2つからまず2つの卵子を採取。激痛ながらもまだ我慢できる範囲。残りもう一つの卵胞は余り育っておらず(小さく)採卵するかどうか先生も悩む。結果注射針を刺したが余りの痛さに我慢できず絶叫。採卵を諦める。採卵にかかった時間は10分ほど。その後30分安静にした後、先生から結果報告。
採れた卵は2つのみで、うち1つは変性卵のため受精させる卵は1つだけ。翌日電話にて受精したかどうかを確認する。
抗生剤(トミロン)と鎮痛剤(ロキソプロフェン)を処方される。
精子の数値(運動量や速度、数など)は問題なし。
採卵の翌日
電話にて受精確認するも受精しておらず、もう一晩様子を見ることに。
採卵の2日後
午前、電話にて再度受精確認すると、受精したものの、移植には使えない異常受精。
午後、来院し異常受精の説明および今後の方針について先生に相談。異常受精の原因は卵子の老化か?精子が2つ同時に卵子に入ってしまったからか?はっきりとは分からない。卵胞が育たなかった原因は、そもそも健康な体に誘発剤という異物を入れてしまったことが逆効果だったか?誘発剤が強すぎたか?次回は完全自然周期での体外受精を試みるという提案もされる。完全自然周期の場合は来月もトライ可能。誘発剤を使っての場合は1ヶ月お休みが必要。
ここにきて初めて壁にぶち当たりました。受精せず移植まで辿り着けないとは思ってもみませんでした。体外受精とひとことに言っても誘発剤の種類や量などにより何通りもの方法があると知り、自分にあった治療をしなければ結果は出せないと痛感しました。杉山産婦人科の帰り、もっと真剣に体づくりをしなければと、イスクラのN先生のもとへ寄りました。銀座の病院などの他院で行われている治療についても再度調べ直すなど、一気に危機感と焦りが出て不妊治療期間中で一番悩み辛い時期だったと思います。
院長からのコメント
たまきさんは中肉中背で健康体の方です。ただ、いつも足が冷えているのと下腹部の冷え、瘀血が気になりました。脈は腎虚なので特に婦人科の問題はなく冷えを取り、瘀血を流す治療が中心になりました。また、卵巣の機能を上げるツボにも自宅灸で施灸していただきました。夏の靴下で足首が出るものが多いですが、足首の上2cmくらいに、女性には大切な三陰交というツボがありますので、そこが冷えるような格好はお勧め出来ません。漢方の先生と私の見解が一致していましたので相乗効果で治療1か月目で瘀血が改善され始めました。
また、たまきさんはお食事に関して少し外食が多いことが気になりましたので、ご自宅でのお食事にはバランスよく、葉酸や亜鉛が取れるような食材をお教えしました。
その後、翌月、生理8日目に来院して別の先生に相談しましたら、完全自然周期での体外受精は効率が悪すぎるし排卵のタイミングを計るのが難しいと言われました。先生により意見が分かれて少し困惑しましたが取り敢えず当月はお休みとし、来月軽く誘発剤を使いトライすることにしました。
体外受精 2回目(顕微受精)
採卵前
生理が来たため病院へ(Day2からDay4に来院)。血液検査→ホルモン数値は正常。
排卵誘発のセロフェン5日分を処方される。自己注射はなし。
2日後に採卵
採血と内診後、採卵日の確定(2日後)。
追加でセロフェンの処方および注射。卵胞は左側に3つ、右側は反応なし。
採卵
前回と同じ流れ。内診で排卵してしまっているかどうかのチェックはドキドキ。採卵自体は変わらず激痛なものの、2回目で流れが分かっているため落ち着いていられた。
結果、3つ採卵のうち1つは変性卵。前回異常受精だったため、今回は2つとも顕微受精することに。杉山院長の提案で、もし受精したら2つとも移植することを勧められる(卵のグレードと年齢を考慮して)。
採卵の翌日
電話にて受精確認→2つとも受精。
新鮮胚移植
グレード3の卵子を2つ移植(この日の担当医は2つの移植に難色を示したが、私が強く希望)。この時点で4分割が望ましいが2分割しかしていない。子宮内膜の状態はいい(厚みがある)。
移植前に着床を促すためのカプセルを1錠服用。移植後、臀部にホルモン補充の注射を2本、および本日より2週間、黄体ホルモン補充のためルトラールを服用する。
移植5日後
黄体ホルモン補充の注射。
移植10日後
市販の検査薬で反応あり。
移植2週間後
妊娠判定日(尿検査)。
実は移植直後から股関節痛、頭痛、貧血、あせも、眠気、下腹部の違和感など、普段とは明らかに違う症状が出たため、もしかしたらと期待が膨らむ反面、まさか1回で妊娠するとも思えず半信半疑でした。初めての移植だったため、その影響かとも思ったりもしました。自宅でのフライングテストで反応が出たものの、ラインが薄かったため100%は信じられず、どちらかというと超初期流産の可能性も30〜40%と言われていたので、嬉しさよりも不安が付きまとうことになってしまい、この時期が一番敏感になり、初期流産の症状や、妊娠初期の症状などについてネット検索魔になってしまいました。
院長からのコメント
鍼灸では妊娠脈というものがあり、それが取れると妊娠の可能性が高いとお伝えすることがあります。とても強くコロコロした脈ですが、なかなかお伝えするのが難しいです。ただ、だいたい6週以降でないと妊娠脈は取れないので移植してすぐの時期は私も妊娠の可能性をなかなかお伝え出来ず残念です。ただ、移植当日からでも着床を促す治療をすることで移植が成功したという症例は沢山あります。骨盤の中の血流が良くなることが着床を促すを考えられます。また、私は臍灸をするのですが、このお灸も安産のお灸として効果があると思われます。
また、たまきさんのように移植直後から身体に変化がある場合は90%以上着床して妊娠に至る場合が多いです。他の症例でも、移植後、まだ悪阻の時期ではないのに気持ちが悪くなったとか、ご主人の移り香で吐きそうになったなど伺ったことがあります。HCGの値が一気に上がった時期と重なっていました。
また、たまきさんの症例のように受精卵を2個戻す方は今までも何人かいらっしゃいました。2個は戻さない病院がほとんでですが、私の患者さまでも2個戻されて双子になられた症例は今のところございません。
グレードが悪く成功の可能性が低い移植を2回繰り返すより、2個を1度に移植する方が、肉体的・金銭的負担を考えると、患者様のためには良いかもしれません。ちなみに、2個移植された方は皆さま双子でもよいとおっしゃっていました。