東洋医学の考えにもとづいた夏バテ解消レシピ3選

食養生   蛭子喜隆

 今回は、東洋医学の考えにもとづいた、本草学的にみて効果的な夏ばて解消レシピをご紹介します。

ゴーヤチャンプルー

 沖縄料理といえばゴーヤチャンプルーですが、暑い地方の料理だけあって、東洋医学的にも夏にこそオススメの料理です。豆腐・ゴーヤ(苦瓜)・豚肉・卵を使ったものが定番ですね。

 それぞれの食材について本草書を調査すると、ゴーヤ(苦瓜)は『本草綱目』巻二十八では「苦く寒にして無毒なり(苦寒無毒)」とあり、その主治としては邪熱を除き、勞乏を解き、心を清く目を明らかにす※1」と記載されています。

※1:「邪熱」とは、体内の余分な熱のこと。「勞乏」とは、疲労し欠乏するという意味です。

 豆腐は『本草綱目』巻二十五では「甘く鹹(しおから)い。寒にして小毒あり。(甘鹹。寒。有小毒)」と記載され、豚肉は『本草綱目』巻五十では「凡(およ)そ豬肉(ぶたにく)は苦にして微寒なり。小毒あり。(凡豬肉苦微寒。有小毒)」とあり、鶏卵は『本草綱目』巻四十八では「甘にして平。無毒なり。(甘。平。無毒)」とあります。

 つまり、本草学的には、苦瓜・豆腐・豚肉の三つは身体を冷やす性質があり、特に重要なのは苦瓜の効能として「邪熱を除く」と指摘されていることです。ゴーヤチャンプルーは暑さの厳しい沖縄ならではの、まさに生活の知恵から生まれた料理といえましょう。

 さらに、ゴーヤチャンプルーの良さは、食欲が低下している時でも、あっさりとしたゴーヤ独特の苦味によって食べやすいこともあげられます。

緑豆粥

 緑豆の薬味・薬性は、甘・寒。(『証類本草』巻二十五)

 日本では緑豆は、緑豆もやしや緑豆春雨としてよく食されていて、中国では緑豆は暑気払いには欠かせない食材のひとつになっていて、緑豆粥がよく食されています。

 中国の元代の本草書である『食物本草』巻五では、緑豆粥について次のような書かれています。

  • 熱毒を解し、消渇を止む。(解熱毒.止消渇)※「消渇(しょうかち)」は口の渇きを主訴とし、現代の糖尿病に似ている、あるいは相当するとされる。

 甘・寒の薬性を持つ緑豆は、体内の余分な熱を冷ます効果が期待でき、暑気払いには最適な食材というわけです。お粥は通常は温かいものを食べますが、冷まして食べても美味しいです。冷やす性質があるので、便が硬くなるタイプの便秘の方にも効果的で、逆に下痢しやすい方は食べ過ぎないように注意しましょう。

胡瓜と冬瓜のスープ

  • 胡瓜の薬味・薬性は、甘・寒。(『本草綱目』巻二十八)
  • 冬瓜(白冬瓜)の薬味・薬性は、甘・微寒。(『証類本草』巻二十七)
  • にんにく(葫・大蒜)の薬味・薬性は、辛・温。(『証類本草』巻二十九)

 キュウリをスープに入れるのは、あまり馴染みがないと思いますが、中華料理では使われることが多く、食べてみると以外と美味しいです。冷やす作用の胡瓜と冬瓜に温める作用のニンニクを少し加えてマイルドにします。寒性の昆布茶の素を入れてもよいですし、冬瓜は出汁をよく吸ってくれるので、お好みで色々な具材を入れてもよいでしょう。